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女は右手にピストルの形を作って、自分の額へとんとん、と押し当てた。
「天城は一発の銃弾によって頭を撃ち抜かれ、部屋の壁に上半身をもたれかけるようにして倒れていたんだ。――貴様。人が銃で眉間を撃たれて、立っていられると思うか?」
「……いや」
「そう。当然天城は即死だったはずだ。自分の身体から出た血を踏む間もなく倒れたに違いない。しかし実際には天城の足裏に血液の跡が残っている。これは天城が殺される直前に、別の血痕を踏んでいたという証拠だ。――つまり、あの部屋の中でもう一人死んでいる。それが、今も行方不明になっている秋水だと見当を付けるのは難しくない。天城は秋水を殺した後、その身体から流れ出た血液を踏んでしまった。その際に、いくつか天城の血の足跡が残されたはずだが……秋水の死体は別の場所へ隠され、血痕も綺麗に拭き取られたのだろう。その過程で、天城の残した足跡も消されたと考えられる」
パブロはごくりと唾を飲み込む。……いやに目ざとい女だ。パブロは内心ざわつくものを感じながらも、そのまましらを切り通した。
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