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ぺたぺたと自分の顔に触って、触感があるのを確かめる。くるくる回っていた生首はこっちを見てぴたりと止まった。ぶるぶる震える俺の腕の中で、ソロモンは無表情にトリスタンくん1号を見ている。
「あれは、死霊でもゾンビでもない。お前の姿を空間上で実像にしただけのはりぼてだ。生きてはいないし、死んでもいない」
「簡単に言って!」
「ぬいぐるみみたいなものだ」
「ちょっと待って、なんで俺は呼び捨てなのに、ぬいぐるみにはくんづけなんだ」
「…………」
「ぬいぐるみより、俺の方に敬意を払って然るべきだよな」
「とにかく、馬鹿トリスタン1号はぬいぐるみみたいなもので、死霊でもゾンビでもないから安心しろ」
「あれで、ちゅうの練習したのか」
「そうだ、阿保トリスタン1号でな」
「な、な、なんで!」
「ただくっつけるだけの子供の接吻で、成人男性二人がいつまで我慢しなければいけないのか」
「まあ、そう言われればそうだな、さっきの気持ちよかったし」
「そうだろう、そうだろう、馬鹿トリスタン1号は、なかなか役に立った」
ソロモンが俺の顔をくいっとつかむとちゅ~ってする。ぺろって舐められたから、舌を出すと、やんわりと噛まれて、ため息が漏れる。
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