絶望の島と奥手な騎士

19/23
前へ
/44ページ
次へ
「いいから! 誰にちゅうしたか言えよ!」  また揺さぶると、無表情のままでソロモンがガクガクと揺れた。 「よかろう。会わせてやる」 「えっ」  ゆすぶる手を止めて、ぽかんとソロモンを見る。  本当に浮気してやがったのかこのやろう! むいーんと頬が膨らむのを感じた。  もう本気で怒ったぞ! ソロモンをぶん投げようとした瞬間、すうっと持ち上がった手が俺の髪を撫でて、前髪をすいた。 「っ……っつ」  離れていく指先に俺の金色の髪が光る。ソロモンがその髪の毛を指先で持つと、ふうっと息を吹きかけた。指先が光って空間に魔法陣を描く。俺にはわからない古代の呪文がその口から唱えられて、ぐるぐると回りだした魔法陣が光った。  魔法陣のあった場所に、何かが浮かびあがる。くるくると回る……それは、人の首だった。  金色の髪に、鮮やかな緑の瞳……すっごく見覚えのあるわんこ顔。  えっと、えっと、これは…… 「俺?」 「トリスタンくん1号だ」  ぎゃあって声をあげて、ソロモンを抱きかかえて壁際に縮こまる。 「死霊、死霊、俺の、いや? ゾンビ? 俺、ゾンビになった?」
/44ページ

最初のコメントを投稿しよう!

189人が本棚に入れています
本棚に追加