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「トリスタン!」
ざっくりとクワを土に突き立てて、布で汗をぬぐいながら視線をあげる。
誰だよ俺のリラックスタイムを邪魔するのは。言葉をしゃべる奴らはみんなうるさい。それに比べて俺の畑のやつらは物静かで、手入れをすればするほど美味い野菜になってくれる。あいつから離れてこうやって土をいじってるときが一番幸せだと思うんだよ。あ、あそこのはっぱに芋虫がついている。
駆除しないと……。
「トリスタン!」
おいと肩を叩かれて、あっと思った時には投げ飛ばしていた。
見事に飛んだのが親衛隊のグスタフだと気がついて、嫌な予感がした。
ぐえっほみたいな音が聞こえて、発育不良の身体が掘り起こしたばかりの土の上でバウンドする。
あーあ、せっかく掘り起こしたのに……
「なにしてんだよ!」
ごろりと土の上を転がったグスタフがそう叫ぶと憤然として起きあがる。
すまんすまんと背中の土を叩くと、その衝撃でグスタフがはっとした顔をした。
「それどころじゃない、お前の魔導士様が……」
いや、ソロモンは全然、全く、これっぽっちも俺の魔導士じゃないけどな。
腐れ縁だってっても誰も信じてくれないのは困ったものだ。
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