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ぐるぐると続く円形の階段を駆けのぼって、城塞の上をソロモンを探して走る。
黒い外套にフードを深く被ったほっそりとした姿を見つけてほっとした。
「ソロモン」
「トリスタン」
視線を北側から動かさずにソロモンが俺を呼んだ。呼ばれたのが、トリスタンでよかった。ソロモンは機嫌のいい時や、悪い時には俺をトリスと呼ぶ。最高にガチ切れしている時にはトリストラムと呼ぶんだ。あんまりそっちの呼び名は聞きたくない。
「あれは、どういうことだと思う?」
すっと外套の中の腕が持ち上がって、白くて綺麗な指先が北を指さす。
北の山を見て、すうっと血の気が引いた。大きなしゃれこうべが三つ、遠目からでもその歯の辺りがかちかちといっているのが見えた。周りでひゅんひゅんと飛び回っているのは、力の弱い死霊だよな。うわ、下の砂埃はゾンビがわいてるんじゃないか?
昼間だってのになんだよこれ。
「死霊の軍団、だな」
こくりと頷いたソロモンの指がくいっとしたを指さした。
「で、あれはなんだと思う」
城壁から下をのぞいて、頬がひくつくのを感じた。
もこもことした白い塊が北の門の外側に密集している。その中には馬まで混じっているじゃないか。その馬の一頭が、樹の中に頭を突っ込んでいる。その枝先にはつやつやとした収穫間際のリンゴがぶら下がっていた。それはいい、それはいいんだ。
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