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すると、さっきまでうなだれていたはずの碧がテーブルを叩いた。
うしろの席に椅子の背をぶつける勢いで立ち上がり、
「っそういうとこだよ!そういうとこが嫌だったんだよ!」
と、一変して声を荒げた。
対して、怒声をぶつけた先にいる湊多は、顔色ひとつ変えずに応戦する。
「‥‥何逆ギレしてんの?」
「だってそうじゃん!何?なんかないわけ?!殴るとか怒るとかしないんだ?!」
「え、何、殴られたいの?」
「そういうことじゃない!湊多はいつも俺のことなんかどうでもいいみたいに淡白じゃん。俺が何してようと知らない、みたいにさ!だからこんなことにもなっちゃったんじゃん!」
「俺のせいなんだ?」
「‥っ、そういうこと、じゃないっ‥‥けど‥っ、そ、湊多にだって責任あるもん!」
「あーそう。だからやっぱり、しょうがないんじゃないですか?って、俺、さっきも言ったけど?」
「なんだよそれ!ホントにどうでもいいんじゃん!俺のことなんて好きじゃないんじゃん!」
「おい!‥‥痴話喧嘩は他所でやってくれ」
沸点がどこまでも上がってゆく碧を制止するように、祐輔が拳をテーブルに叩きつけた。
ところどころからヒソヒソ声と好奇の眼差しが寄せられているのに気づいて、碧はごめん、とちいさく呟いてから腰かけた。
「別にお前らふたりがどうなろうと、マジでどうでもいいんだけどさ。それより今は‥」
と、祐輔が言いかけたとき、スマートフォンがブルルと鳴って、ラインの新着メッセージを知らせた。
「‥‥授業終わったから、今から来るって」
ぴく、と肩を震わせたふたりの男と、やはり何事もなかったみたいに箸を進める男とを見遣って、祐輔は大きくため息をついた。
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