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ロサンゼルス郊外にある使われなくなった倉庫の片隅で成人男性の変死体が見つかった。
一見すると遺体には目立った外傷が無いものの、服を脱がせてみれば心臓の位置にまるでくり貫かれたかの様な手のひら大の円形でぽっかりと風穴が開いている。
不思議なことに当たりに血液が飛び散った形跡もなく、傷口からも出血していた様子は見受けられない。
あたかも端っからそこには何も無かったかの様に。
「警部、どうやら死因はまたこの傷みたいですね」
若い検察官が茶色のロングコートを羽織っていた刑事らしき男性に遺体の衣服をまくり上げて見せるようにして言った。
「あぁ、さすれば同一犯の仕業だと睨むのが当然だが……。それにしてもこれで何件目だ」
見せなくていいと警部と呼ばれた男性は片手を目に当てて服を戻すように催促する。
「今回で21件目ですね。それも全てこの一か月以内で起こってます」
「ったく、相当にクレイジーな野郎だ」
このような傷をどうやってつけたのか、犯人は何が目的なのか――、現場には何も手がかりが残されておらず捜査は難航するばかりで警部は大きくため息をついた。
「そういえば最近巷で噂になってることがあるんですけど、警部は知ってます?」
「噂?」
「えぇ、ドッペルゲンガーってやつなんですけどね」
―★―
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