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この世には自分と"似て非なる"人間が3人存在する。
オカルトと言ってしまえばそれまでの話だが世間一般では自己像幻視(ドッペルゲンガー)と呼ばれ、自分そっくりの人間に出会ってしまった者は死んでしまうのだとか。
よくよく考えてみれば偶然でも出会ってしまえば最後となってしまうのだから身の毛もよだつような話であり、しかしながら根も葉も根拠も無い話に20代前半の男性は突拍子もなく疑問を抱き隣に座る同い年の幼馴染の女性へと投げかけた。
「なぁ。ドッペルゲンガーって出会ったら死ぬって言われてるけど実際のところどうなんだろうな」
口を開いた男性は皿に盛られたポテチを口に運び、隣に座る女性がプレイするゲームの画面へと興味が無さそうに目を向けながら言った。
前髪は目に掛かるか掛からないか、今風に整えられたアシンメトリーのヘアスタイルに少し茶色を馴染ませこれから何処かへ出かけようとでもいうのか部屋着とはかけ離れた外向けの服装で胡坐をかいている。
「どしたの?藪から棒にオカルティックな事言っちゃって、変なポテチでも食べちゃった?」
日頃からファンタジー要素満載なゲームにも興味を示さない彼がこうした話題を振ってくるのを珍しく思ったのか女性はきょとんとした表情になる。
少し世間離れしているオレンジ色の髪をおさげにしてゴムで括り、黒縁の丸メガネをかけた小柄の女性である。
「いや、この前海外で男性が変死体になって見つかったっていうニュースがあったろ。大学の連れとそのことで話題になってその時ドッペルゲンガーのせいじゃないかって言ってたんだ」
「ポテチの件はスルーですか、そうですか――。俺氏はその手のリアルニュースは専門外なのでお答え致しかねますね。しいて言うのならここはリアルであり、いつもりっくんが言ってるファンタジーやメルヘンの世界じゃないってことくらいかな」
隣に座る男性をりっくんと呼び、カチャカチャと忙しそうにコントローラーを動かしながら直訳すれば判らないと女性は答えた。
「俺が日頃から変な台詞を吐いてるみたいに言うな」
りっくん――本名を野村リクは「まぁでも、そうだよな」と然程答えを期待していなかったのかあくまでもオカルトに過ぎないよなと自己完結していた。
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