第三話 俺を知らぬ君

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第三話 俺を知らぬ君

「プリンスのお兄ちゃんやん」 あっ、展理が俺を知ってた。 「てんちゃん、知らんかったと? ゆうやん、ずっとここの常連さんやけん」 「知ってますよ」 そうなんだ。 名前までは知らなくても、俺の職場と俺の顔は認識あったか。 「お待ち、端数出たけん、ミンチ2つおまけしとうけん」 「ありがとうございます。また、来ます」 そう言って、出来上がり商品を姉御から受け取り、展理は帰って行った。 姉御め(空気読めよ)。 何だよ、端数って。 20個焼いて、俺が8個にしたから、おまけにしたのかよ! そこは、俺にだって端数だからやるって、お誘いあっても良かったんじゃねえのか? こちとら、常連だぞ。 「あれ、てんりじゃね? お姉さん」 入れ替わりで、展理と同じ年頃の女がやって来た。 「いらっしゃい。そうよ、てんちゃんやん」 「そう。 あいつの姉ちゃん、ウザくて嫌い。 たこ10個」 「はい、すぐ出来るよ」 姉御、聞き流したな。 俺も嫌いな、展理の姉、平成子の悪口。 いや、陰口。
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