第四話 蜉蝣(かげろう)

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第四話 蜉蝣(かげろう)

俺は、普通の人間じゃなかった。 他人を脅かし、人に畏怖される稼業のアタマをしている親に持って生まれた。 子供の頃は花を摘んだり、蝶を追いかけ、白い画用紙にくれよんで絵を描いたり、友達と川遊びした幼少期。 小学校中学年になった頃には、世の中ちゃんと見えて来て、俺は引いた。 『俺は普通じゃない』 たくさんの人間が絶えず出入りする自宅。飛び交う怒号。 時折目の当たりにするただならぬ喧騒。 周囲の冷たい目。 「たかやんとは遊ばん」 故郷では、『たかやん』だった。 今のこの街では、『ゆうやん』。 孝之とマスターの息子の貴志と『たか』が一緒だったから。 『ゆう』が取られた。 それが、良かった。
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