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気が付けば、家を出ていた。
何も持たず、ただ、財布の中の金だけを頼りに、遠い街を彷徨った。
俺は死に場所を探していた。
「ごめん、君、暇?」
ホームレス生活3日目、辿り着いた街の空き地で佇む俺に、スラリとした50絡みの男が声を掛けて来た。
「君、ここで何をしているの?」
「……休んでただけ。大きな水溜まりだな……。って思って」
「はは。そうだね。大きい水溜りだね。もう1ヵ月になるんだよ。 アメンボも泳いでるし。 オタマジャクシはカエルになるし、本当どうなっているんだろうね。此処は」
初老の男はYシャツにベストを着こみ、耳にイヤホンを付けていた。
最初はお洒落なおっさんかと思ったが、よく見るとパチンコ屋の従業員服だった。
「色々あって、今人手不足なんだ。君、まだ若いだろう? 店舗の上は寮なんだ。今日から家で働かない?」
勿論最初は断ったが、結局、最後は働いていた。
一族経営の小さな店で、副業でマンションやテナント収入もある裕福な家の主人だった。
俺を拾ったおっさんは。
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