第二話 猫を愛す君

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「いらっしゃい! ゆうやん!」 「ミンチ10個!」 俺が勤めた翌年から、10年務めた会社を脱サラした綺麗な姉ちゃんがやってるたこ焼き屋のミンチ焼き(タコの変わりに鳥のミンチが入っている)が俺の好物。 「10分待って。たこの方ならすぐ出来るよ」 「じゃあ、みんち8個。たこ8個食べて待ってるから」 「やぁんっ! みんちメンドイ」 「さっさと焼け。 焼かねえと店が閉まるまで待つぞ」 「営業妨害良(い)くない!」 「勤労意欲を持て、姉御。ビール貰うぜ」 ガラスケースからビールを取り出し煽っていると、たこ焼き8個が早速出て来た。 「もう、どうせなら、20個食べてよ。 焼きがいあるから」 「俺は独り身だ」 店の雑誌を一つ取って、見ながら至福の時間を過ごしていると、今日に限って展理が店にやって来た。 「お姉さん、今日ミンチある?」 「今から焼くところだけど、10分時間良い?」 「うん、たこ10個、みんち10個」 「了解~」 展理は、店の外の待合室に腰掛けた。 店内のテーブル席で、俺は一人、訳もなく緊張してしまっていた。 高校を卒業し、県外の専門学校、就職先。 地元に帰って来てから何度となく街ですれ違ったものの、家出した後、1年半振りにしっかりと見据える事の出来る距離にいる展理に動揺せずには居られなかった。 高校生の時の面影を残しているが、髪を明るく染め落ち着いた服装の性か大人びて見える展理は、懐かしくもあるもののどこかその存在が前より遠くに感じられた。
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