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「え、相場くんと付き合わなかったの!? 付き合えばいいじゃん!!」
その後、満里と落ち合って喫茶店に入った。
カフェラテを飲みながら、満里が驚いた表情をこちらに見せる。
「嫌だ」
否定する私に満里は首をかしげる。
「なんで? 相場くんなら絶対大切にしてくれるよ?」
「そんなのわかってるよ」
真冬なのに冷たいアイスカフェオレを飲みながら私はいう。
あの温かいキスがまだ消えない。残っている。
だからそれを早く忘れたくて冷たい飲み物を頼んだ。忘れないと、あの病院に戻ってしまいそうで。
「だから嫌なの」
満里は私を見つめてきた。
その表情はちょっと深刻そうだった。
「香夜……?」
心情を悟られ、私は眉間に皺を寄せるしかなかった。
何が嫌かって、もしまた同じようなことが起きたら、あいつは死んでも私を助けようとすることだ。
事実起こったことだ。自惚れじゃない。
さっきの告白だって、そのことを物語っていた。
「また……同じことがあるかもしれないでしょ。私、恋愛は二度とできないよ」
自分でも顔が歪んだのがわかった。すごく胸が苦しくて悲しくて辛くて……。
それでも、もう泣かない。さっき、相場の前でたくさん泣いた。
満里は少し悲しそうで、そのなかには憤怒を見せた。
もう二度とないと言い切れないのは事情があった。
あの日、知春の最後の言葉は、私に呪いの言葉をかけた。
「だからね」
と、にこりと笑った知春の顔から、思いもしれない言葉が飛び出してきた。
「香夜。たとえ悪魔に魂を売っても私は貴女のものにするから覚えておいて」
そう言い放った宮城野知春の表情は、艶かしくこの世で一番美しい笑顔だった。
知春が戻ってきたらまた……。
愛憎の囁きはいつまでも私を縛っている。
Game Over
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