Black House

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「あ、こんにちは」 「これに参加するの?」 「考えてるんです。どうしようかなぁって」 「だったら参加した方が良いよ。これ、人気があるみたいだから当たるかわからないし」 先輩の言葉に首を傾げる。 そんな人気のイベントなのか。ただ、豪華な屋敷に三泊四日するだけなのに。 いや、でも費用がかからない。参加料金は無料。その上、屋敷までの交通費も無料と書かれている。 冬休み、家族と一緒にいたくないと思ってる高校生にはもって来いの遊び場だ。友達と行くのにちょうど良い。一体何処の金持ちが、そんなイベントを思いついたのだろうか。 屋敷もどういうものか気になる。 「ま、あたし達も応募したけど当たるかわからないから」 そう言って先輩達は行ってしまった。皆、行くつもりだ。 交通費が無料ということは、全国から応募が来るのに違いない。知らない人がたくさんいるに決まってるが、ハガキに友達の名前も書けば、そこは配慮してくれるみたいだ。 なんて高校生に天国な場所を与えてくれるイベントなのだろうか。私はまだ応募もしてないのに、応募しても当たる確率は物凄く低いのに、気分は行く気になっていた。 もう、うつ病は寛解だし、人とコミュニケーションを取るリハビリがてらいいじゃないか。 想像を膨らませながら歩いていると、なんだか、楽しくなって来た。この際、一人で参加しても別にいい気がする。早速、親に言おう。そう思うと足が速まった。 しかしそんな時に邪魔は入るもので、携帯のバイブが着信を伝える。仕方なく出ると、親友の山口満里(やまぐちまり)からだった。 「もしもし? 満里が電話なんて珍しいね」 「ねぇねぇ、冬休みって予定入ってる?」 前言撤回。 なんてタイミングが良いのだろう。これは、満里を『Black House』に誘うチャンスではないか。 「いや、これから予定を入れようって考えてたけど……」 「あのさ。ウチの名前と一緒に香夜の名前もハガキに書いて、『Black House』に申し込んだら、当たっちゃってさ」 「嘘! マジで!?」 なんという事だ。なんて偶然なんだ。満里も申し込んでいたらしい。きっと私が一番暇だと思ったから、ハガキに書いたのだろう。
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