Black House

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「中野さん、この間発売したポイファイ読んだ?」 そう話しかけてきたのは、クラスのオタク仲間の男子、斉賀実(さいがみのる)。 こいつとは妙に気が合う。 ちなみに、ポイファイとは、ポイントファイターという漫画の略。皆は餓鬼が読む物だとか言ってるけど、私と斉賀はハマって読んでいる。 この漫画、意外に深いんだ。 そんな話をしていると、寄ってきたのは、そのポイントファイターのゲームを異常に知り尽くした男子、畑岡大輔(はたおかだいすけ)だ。 「あれ斉賀に借りて俺も読んだ!」 「面白いでしょ」 「これは、マジで面白い」 話が盛り上がった所で急に、斉賀が話を変えた。 「ねぇ、さっきからあの人達、中野さんのこと見てるけど知り合い?」 あの人達とは、中学時代の三人。 この質問に何と答えようか迷う。 「あ、うん。まあ……、中学の時のね」 「ふ~ん……」 斉賀も畑岡も私の気持ちを何となく読めたのか、それ以上、何も聞いて来なかった。 そんな宜しいタイミングで満里は戻って来た。有難い。 さっきと同じように、互いに自己紹介すると、二人は気を遣ってくれたのか行ってしまった。 「男子とも仲が良いんだ」 「うん。まあオタクだから」 苦笑する私に、満里は笑う。彼女もオタク。私と違い高校では隠しているらしい。 あまりオープンに出来ないのは少し嫌な気がする。 大変だなぁ……。 「何、まさかポイファの話?」 「当たり! プリッチとか、ズボンの話とかもするけど……。それよりさ、屋敷ってどんな所だと思う?」 忘れていた。満里とは屋敷の話をしようと思っていたのだ。 彼女は、考えたものの、あまり思いつきが良くないらしく。 「『Black House』なんだから、黒いんじゃない?」 と、適当に答えた。 黒いか……。 今の現状を見ていると黒いというより暗いような気がする。ホラー映画で出てくる廃墟みたいな……。 そう考えると鳥肌が立った。
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