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「楓、か。馬には乗れるか?」
若武者に聞かれて楓は首を横にふる。
村には畑を耕したり荷物を運ぶための馬はいたが、乗馬できる馬ではない。
そのため、楓は馬には乗れない。
「仕方ないか。」
そう言って若武者は楓の腕を取る。
引っ張られて転けそうになる楓を優しく抱き締める若武者は、クツクツ笑う。
「転けるなよ。」
言われて赤くなる楓を若武者は青毛の馬に連れていく。
そして、若武者はひらりと馬に乗り、楓に手を差し出す。
「手を出せ。」
言われて楓は目をパチパチさせる。
「早くしろ。」
若武者に強く言われて手を出そうとするが、風呂敷包みに気づく。
どうしようかと考えていると、横から伸びた手に風呂敷包みを奪われた。
ハッする間もなく腰を抱えられて若武者の手に楓の体が渡された。
「よし。暴れるなよ。」
上手く楓の身体を抱き抱え若武者は満足そうだ。
一方いきなり視線が高くなり、身体を強ばらせて楓は固まった。
「掴まっていろ。」
頭の上から声をかけられて顔をあげれば、若武者の掛け声とともに馬が走り出した。
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