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真の暗闇だった。
シゲルは砂利の散らばったフィールドにうつぶせに倒れていた。
ぼんやりとした白い影が自分を見下ろしていた。
顔は見えなかったが、そいつが嘲るようにククッと笑っているのはわかった。
ナンテ、ブザマナ――。
声が聞こえた。
「くそっ!」
悔しさで歯を食いしばると、ジャリッと砂の味がした。
何とか立ちあがろうとしたが、どうしても体を動かすことができなかった。
シゲルは片頬を砂利の上に押し付けられたまま必死に相手の方を見ようとあがいた。
フィールドの外から、大勢の観衆が自分の姿を見ていた。
どの顔もぼんやりしていたが、ひとりの少女の顔だけははっきりとわかった。
少女は憐れむような眼差しでシゲルの方を見ていた。
ブザマナ――。
再び声がした。
コレガ、ホントウノ、アナタ。
ナンテ、ブザマナ――。
「黙れ!」
シゲルは叫んだ。
「黙れフェイト!もうほっといてくれ!」
……
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