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「しかし、坊ちゃま……少しはゆっくりなさっても」
荷物を持って
僕の部屋までついてきた中川が
残念そうに言って部屋の扉を閉めてしまうと。
「よく言うよ。ねえ、本当のところ――僕を当主に押し上げたのはおまえだろう?」
僕は声を潜めて
まだ聞いていなかった真相を追及する。
「征司様、貴恵様におかれましては非常に申し訳ないことをしたと思っております」
さすが
長い間天宮の家にいるだけあって
中川は少しもうろたえたりはしなかった。
ただ少し俯いて
「ですが約束だったのです。香乃子様との――」
「お母様との?」
「はい」
懐かしい
母の名前を口にした。
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