episode202 誰も見てはならぬ

3/30
前へ
/30ページ
次へ
「このお屋敷に和樹坊ちゃまが戻られた暁には、私が御傍についてお守りするようにと」 「それだけじゃないでしょう?」 柔らかな口振りや 人当りのいい笑顔なんかで誤魔化されない。 「ええ。時が来たらあなた様が当主になるべく手助けすると――私はあの方に約束致しておりました」 「おまえに頼んで正解だな」 「恐れ入ります」 この男は馬鹿がつくほど生真面目で。 かつどんな状況であれ 完璧に仕事をやり遂げるつわものだ。 「それにしても意外だったな」 「はあ……何がでございましょう?」 だけど幸か不幸か嘘は下手。 「おまえもお母様に、骨抜きにされた口だったとはね――」
/30ページ

最初のコメントを投稿しよう!

184人が本棚に入れています
本棚に追加