episode202 誰も見てはならぬ

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間接照明の仄灯りをたどってゆけば。 「ん……?」 スピーカーから聞こえてくるのは かの有名なプッチーニのアリアだ。 「……らしいな」 スリッパを脱ぐと。 一人ほくそ笑んで僕は ミストサウナに続く扉をそっと開けた。 ――途端。 (アロマオイルか……) 辺り一面充満した えもいわれぬ芳香な花の香が 細かい霧に混じって降り注いだ。 幸い 施術台の上の王様は振り向きはしなかったが。 浅黒い肌をした 混血の美しいセラピストの青年が 「あ……」 僕に気付いて綺麗な青い瞳を見開いた。
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