episode202 誰も見てはならぬ

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僕は無言のまま 彼にマッサージを続けるよう促す。 手を止めれば 叱られると思ったのだろう。 訝しげに僕を見つめながらも 彼は王様の背中の上で再び手を動かし始めた。 繊細な指がラインを描いて 流れるように肩甲骨をなぞる。 深い溝。 美しく鍛えられた 理想的な男の背中。 僕は足音もなく施術台の周りを一周しながら バスタオルで覆われた硬いヒップ筋肉まで視線を落とす。 オイルで艶やかに湿った肌に 違う男の指が這う様に。 思わず溜息が零れそうになって 僕は乾いた唇を舐めた。
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