episode202 誰も見てはならぬ

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セラピストは口には出さないまでも どうしたものかと言う顔で。 落ち着かなさげに僕の動く通り 青い瞳を走らせていたけれど。 もちろん――。 この人が気付いてないわけないんだ。 (やれやれ……) 僕は頭の上に回り込み 身を屈めると。 「――いつまで知らん顔を?」 いまだ顔を伏せたままのお兄様の枕元に そっと頬杖をついて問いかけた。 沈黙のまま何秒たったか。 さすがに セラピストの彼の手も止まる。 やがて 長い指が気だるげに濡れた髪をかき上げると。 「おはようございます――お兄様」 ベッドに伏せたままの征司が ようやく顔だけこちらに向けた。
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