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セラピストは口には出さないまでも
どうしたものかと言う顔で。
落ち着かなさげに僕の動く通り
青い瞳を走らせていたけれど。
もちろん――。
この人が気付いてないわけないんだ。
(やれやれ……)
僕は頭の上に回り込み
身を屈めると。
「――いつまで知らん顔を?」
いまだ顔を伏せたままのお兄様の枕元に
そっと頬杖をついて問いかけた。
沈黙のまま何秒たったか。
さすがに
セラピストの彼の手も止まる。
やがて
長い指が気だるげに濡れた髪をかき上げると。
「おはようございます――お兄様」
ベッドに伏せたままの征司が
ようやく顔だけこちらに向けた。
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