非常ボタン

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山奥の精神病院。 ここはおそらく牢獄に等しい。 人間の尊厳を奪っている。 人間の自由を奪っている。 食事も不味い。 珈琲の味は酷すぎる。 豆の香りがしない。 豆の焦げた苦味しかない。 粗悪な茶碗や皿は、ちゃんと洗っているのか? 割れたりヒビが入っていても、そのまま使われていた。 僕は非常ボタンを押した。 けたたましくサイレンが鳴った。 昔、高校時代に悪ガキがいつも非常ボタンを押しては教師を困らせていたな。 窓ガラスを割ったり、壁や机に落書きしたり、教師の車に傷を付けたり。 僕は、大人しい真面目な目立たない学生だった。
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