氷炎将軍フレイザード(DRAGONQUEST ーダイの大冒険ー)

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登場作品:DRAGONQUEST ーダイの大冒険ー 分類:手柄第一、生まれたて 職業:魔王軍氷炎魔団軍団長 立ち位置:中ボス 悪人度:A カッコよさ:B 強敵度:B 存在感:B 作品貢献度:C 演:山口健、奈良徹(リメイク版) 私がダイの大冒険を初めて読んだのは小学生低学年の時だった。自分が買ったのではなく友達に大きなお兄さんがいたため、友達の家のお兄さんの本を読ませていただいたと言ったところだ。 名作ではあるが版権の厄介さからゲーム作品への登場がしにくかったり、リメイクの機会に恵まれない等で不遇の名作と言えた。ところが最近はリメイクされたようで、ファンとしてはリメイクというものにあまり良いイメージがないながらもそれはそれで嬉しく思う。 ちなみに私の初ドラクエはドラクエIIIのスーファミ版だったのだが、小学生低学年には少々難しかった。当時の私はどちらかというと呪文頼りで、武器もブーメランやムチ等の複数を攻撃できる武器を好んだりなど「特殊っぽい」攻撃を好んでいた傾向にあった。 そんなんだからよくMP切れになり、余計に難しくしていたのかもしれない。 そんな私が初めてダイの大冒険を読んだ時はやはり呪文の描写等に感動した覚えがある。ゲーム画面とは違う呪文のエフェクトに「ギラってこんな感じなのか!」とか「イオラに比べるとイオナズンは確かに威力が違うな!」など心をときめかせていたのだ。 そして同時にダイやヒュンケルの剣技にもカッコイイ!と感動し、呪文頼りだったプレイスタイルを見直すきっかけにもなった。 そんな私は、大学生になってからとある友人の影響でダイの大冒険を大人買いしてしまった。余談だが彼とはよくドラクエIXを一緒にプレイしており、ゲームの進化と共に呪文エフェクトや必殺技等の演出も近代化していて色々と楽しめたゲームだったと思う。 名作とは色褪せないものでダイの大冒険ははっきり言って色々とうろ覚えだった部分があったにもかかわらず夢中で読み進めた。「ちょっと読んでみるか」くらいに思っていたらいつの間にか7冊くらい読んでいたなんて事もあったくらいだ。 しかし、そんな経緯があった私だがひとつ変わっていなかった事がある。それはこの作品に登場する「悪役」の良さに対する感動であった。 正直、私はダイの大冒険は勇者陣営より大魔王バーンと彼が率いる様々な悪役達の方を応援していた。前大戦の魔王ハドラーとその下に配属されている六大軍団長と配下達。そもそも六大軍の「不死騎団」「氷炎魔団」「妖魔士団」「百獣魔団」「魔影軍団」「超竜軍団」というそれぞれのネーミング自体がワクワクしてくるので好きなんだが、それぞれの軍団長がこれまたみんなキャラが立ってるのだ。 そんな軍団長も結局はダイ側に寝返ったり、魔王軍に残って暗躍したりなど活躍は様々なのだが、基本的に共通するのは「みんなしぶとい」という事である。よくみんなの壁としてダメージを引き受けてくれるクロコダインや何度も体を壊していったヒュンケルも最後まで決して死ぬ事はなかったし、しぶとく生き残り続けたザボエラ、色んな意味で大どんでん返しを起こしたミストバーン。そして比較的退場は早かったものの、後まで作品に影響を与え続けたバランと、とにかくストーリーを支えていった功労者達の集いと言えた。 だがそんな中で唯一、わりかし早めに物語から退場し、特に復活の機会も与えられられず再登場する事もなかったのが今回紹介するフレイザードなのだ。 このフレイザード、勝利のためならどんな手段も厭わず、戦闘狂というわけでもなくとにかく圧倒的優位の状態で敵をいたぶるのが大好きなヤツである。何せ外道時代のハドラーが禁呪法で生み出した魔物であり、ハドラーの性格を反映した性格になっており、そんな分かりやすい悪役っぷりでありながら決して最強というわけではなく、意外と分析力に秀でたところもある。しかし私としては彼を構成するそんな要素のひとつひとつが大好きだ。 それになんと言ってもその見た目。明らかに悪役という見た目をしている。半分は炎で半分は氷で出来ているところと、まるでデビルマンみたいな口!正直、初めて見た時から注目していた。どんな活躍を見せてくれるんだろう!?と… まずフレイザードは大嫌いなヒュンケルを消しに現われるのがダイ一行との初顔合わせなのだが、続いてすぐにダイの知り合いで良い関係であるレオナ姫の前に現れる。 レオナ姫を守護するパプニカ三賢者のうちの二人アポロとマリンがフレイザードと戦うも、フレイザードはこれを一蹴!わざわざ女性であるマリンの顔を焼くなどの非道行為を行うが、その時にフレイザードが放った「戦場に男も女もねぇ!傷つきたくないなら出てくるんじゃねぇ!」という言葉には普通に納得してしまった。 そしてフレイザード得意のフィンガーフレアボムズ(つまりメラゾーマ五発同時発動)がアポロのフバーハを突き破る(まぁフバーハじゃ呪文を防げないのだが)場面を見て私は求めていた悪役像を発見した喜びに包まれた。早くコイツとダイの対決を見たいと心躍らせたものだ。 そしてすぐにもその機会はやってくる。ダイはヒロインたるレオナを守るために再会を果たしつつフレイザードと戦闘。それまでクロコダイン、ヒュンケルと強敵を打ち破ってきたダイにはさすがに手こずるフレイザード。何せフレイザードはたった1人なのでアウェイもいいところである。 しかしフレイザードは私の期待を裏切らなかった。アウェイゲームの対策もバッチリなフレイザードは秘技たる氷炎結界呪法を発動させた。これは舞台となったバルジ島の南北に炎の塔・炎魔塔と氷の塔・氷魔塔を建て、二つの塔を結んだ円の内側に入る敵の魔法封じと身体能力を下げるというフレイザードの切り札のひとつだ。 これにより優位に立ったフレイザードはなんとレオナを氷漬けにし、人質にとる。先に戦ったクロコダイン、ヒュンケルが武人として描かれていたのに対し、フレイザードは徹底的に卑劣漢に描かれているのだが、もはや見ていて清々しくなるくらいである。 さすがのダイ達も一旦撤退し、それぞれの塔を破壊する作戦に出る。魔王軍側はハドラーを筆頭にバラン以外の残った軍団長も総出で邪魔をするがクロコダイン、ヒュンケルの助力によって結局二つの塔は破壊されてしまう。そしてフレイザードは再びダイ達と戦うのだが、頼みの綱である氷炎結界呪法はダメになったので大苦戦。 ただ私としてはさすがにこのままストレートにフレイザードが負けるわけないと思っていたので反撃に期待していたのだが、フレイザードは自らの命を削る秘技、弾岩爆花散を発動。これは自分をバラバラにし、その岩ひとつひとつが弾丸のように敵を襲う技だ。 実は私は最初は「なんか地味だな」と思ったのだが、この技を使ったフレイザードが酷く疲労しているのを見て考えをあらためた。 「こ、ここまでやるなんて!こいつ根性あるぜ!?」 私はそもそもフレイザードのトゲトゲしさというか、何をしでかすか分からないような危なっかしさが好きだった。 しかしそれだけではないのだ。ダイ達に囲まれても不屈の闘志で生命を削る最終技で応戦し、炎も氷も消えかけた痩せ細った姿で仁王立ちする姿はシンプルに「かっこいい」と思ってしまったのである。 生まれてからたった1年の歴史しかなく、手柄が欲しいというひたむきさにも感動してしまった。 冒頭の辺でも書いたが私は大学時代にとある友人の影響でこの作品に再び触れたわけだが、実は彼はとあるサイトでフレイザードがFateのサーヴァントとして召喚されるSSを書いていた。そこで彼は読者から「フレイザードはそんなに強くない」「もっとド汚い事をしでかすべき」みたいに指摘を受けたのだが、これには物申したい。 強すぎないのがフレイザードのミソだというのは述べてきたが、ド汚いというのは果たしてそうなのだろうか? フレイザードは毎回単独である。対してダイ一行は常にフレイザードを囲んだ状態で戦闘しているわけだ。そこでフレイザードが出来る対策をとっているだけだと思う。そしてそういった部分もまた彼の魅力なのだ。 ド汚いというよりその危なっかしい性格と行動に良くも悪くも読者は刺激を受けるのだろう。 結局フレイザードはミストバーンに凄まじい鎧を提供されて暴れ回るも、ダイの完成した剣技にやられてしまった。だが、最後までフレイザードは自分らしさを見失う事なく、色んな意味で孤高を守って散っていった。 ボロボロの体で仁王立ちする姿も、鎧姿になってもいずれ再起を狙う姿も、理を説いても耳を貸さずに敗れていく姿もフレイザードの生き様…歪みない魅力なのだ。 そんな生き様の良さには善も悪も、そして生きた長さも関係ない。そう考えさせられる素晴らしい悪役だったと思う。 f93f78e7-b846-4e09-8756-c6c2ffc02418
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