西川睦美(名探偵コナン)

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登場作品:名探偵コナン 分類:整形型、殺人鬼 職業:間宮家当主…かと思いきや… 立ち位置:青の古城探索事件の犯人 悪人度:S カッコよさ:E 強敵度:C 存在感:C 作品貢献度:C 演:京田尚子 名探偵コナンのアニメを見始めたのはなんと私がコナン君と同じ小一の頃である。なんとも息の長い作品であり、もう私はとっくに工藤新一の年齢を越えてしまった。これはおそらくコナンの読者(視聴者)あるあるではないだろうか? そんなコナンの長い歴史の中には様々な犯人がいる。やはりどちらかというと過激な犯行を行った犯人や、殺害人数が多い犯人が印象に残りやすいが必ずしもそれだけが重要なわけではなく、有名どころでは図書館殺人事件の津川館長なんかは過激な犯行もなく殺害人数は1人と少ないものの、その怖さからか今なお怖かった犯人として挙げられる事が多い。 しかし、個人的には今回紹介する西川睦美は上記の3つの要素をすべて兼ね備えた犯人なのではないかと思う。 この人が登場する事件は、コナンと阿笠博士と灰原と少年探偵団の連中がキャンプに来たはいいがテントを忘れて引き返している時にたまたま見つけた西洋風の古城が舞台なのだが、古城なだけあり既に不気味になりうる要素があった。 コナン達が泊めてもらえる事になったその古城は間宮家の所有であり、豪華ではあるが同時に4年前の大火事で間宮家の長女を含む15人が死亡した塔のある、曰くのある場所だったのだ。 また、先代の当主が城に隠された財宝の手がかりである「チェスの暗号」を遺しており、コナン達はそれを解き明かそうとする…というのが大まかなあらすじである。 そしてこの事件には庭師、当主、当主の娘の婿養子(2番目の旦那)、当主の娘の息子(最初の旦那の子)が登場するのだが、ぶっちゃけ種明かししてしまうと今回紹介する西川睦美は当主である間宮マス代として登場する。つまり西川は間宮家当主に成り代わり、長い間老婆のフリをしながらお宝を狙っていたわけだ。 まずこの執念というか、お宝の為ならなりふり構わない感じがサイコすぎて好きである。まったく話が通じない感じがまさに救いようがなくて。 しかもそのためだけに合計17人殺している。はっきり言ってコイツは出る作品を間違えている。コイツは金田一の方に出た方がいいと思う。 個人的にこの西川睦美が怖い犯人に挙がる理由としては、コナンと阿笠博士が早いうちに離脱してしまうところが第一ではないかと思う。普段なら少年探偵団が追い詰められてもコナンか大人である阿笠博士がいれば安心感があるのだが、二人とも序盤でこの西川に気絶させられて拉致されてしまうのである。 余談だが、実は阿笠博士が黒幕(黒の組織のボス)ではない事を証明した1人なんじゃないかと思う。黒幕ともあろうものがまさかこんなぽっと出の犯人にあっさり気絶させられるというのも変だろう。 意外にも阿笠博士黒幕説の否定材料に使える犯人だったりもするのだ。 この事件は基本的には灰原と少年探偵団で挑む事になるわけだが、元太も拉致され、光彦もいつの間にか行方不明になったり等徐々に主人公側の人数が減っていくという状況が危機感を煽り、物語に引き込む材料になっているのだ。これを可能にしているのは西川睦美の凄まじい行動力と得体の知れなさあっての事である事は間違いないだろう。 第二に先程チラッと書いたがまだ犯人が判明していない時の得体の知れなさが良い味を出している。あの有名な『黒い人』状態の西川は鉄の棒を持って城の地下を徘徊しているのだ。長年の生活からか地下通路の仕掛けや隠し扉等を熟知しており、ホームグラウンドという点で少年探偵団に対して優位に立っている。 これが怖い。黒い人状態で凶器を持って歩き回る姿はシンプルに怖く、まだ力のない少年探偵団と対決している事からシチュエーション的には悪い番人や怪人が迫ってくるホラームービーや『クロックタワー』等の逃げ回る系ホラーゲームの状況に近い。 今でこそスピンオフ作品『犯人の犯沢さん』等でネタ的に扱われる事もある黒い人だが、個人的には一番怖い黒い人なのではないかと思う。 ちなみに西川の正体がバレた後も、車椅子生活のはずの老婆が猛ダッシュで追ってくるため、やっぱり怖い。 そして最後に、その西川のイカれたキャラクターである。 西川は財宝のためだけに間宮家の城に潜入し、本物の間宮マス代にバレてクビにされる事になりかけたために殺害し、すり変わるという作戦を決行。そして序盤で隠し部屋で本物の間宮マス代の白骨死体と『アイツハ私二 ナリスマシテ 城ノ宝ヲ横耳』(横取りと掘る前に息絶えた)という遺言を発見したコナンは背後から殴られ拉致されるわけだが、これを機に読者を謎解きに引き込む演出は見事である。だが同時に子供ですら邪魔者であれば容赦なく攻撃している事から明らかに西川が危険人物であり、少年探偵団も事によっては無事じゃ済まない事を印象づけて読者を不安にさせるという要素も見事に満たしているのだ。 そして間宮マス代とすり替わった後は誤魔化すのに苦労するであろうマス代の娘と長年仕えた使用人達を見事にまとめて焼き殺した。 この財宝のためならばどんな手段も厭わないという分かりやすいイカレっぷりは読者、視聴者に『こいつには何を説得しても無駄だ。ヤバいぞ』と思わせる事に働きかけるだろう。 どうやら西川は間宮マス代の顔を保つ為にすり替わってる20年間の中ででこっそりと何度か外国に整形をしに行っていたらしく(ゆえに最初にパスポートの話をしてしまい、コナンに怪しまれるきっかけになってしまった)、もはや『そこまでやるか!?』と言いたくなるレベルである。凄まじい執念というか、財宝に目がくらんだ人間の中でもなかなかのイカレっぷりというか入れ込みようではないだろうか? へたをしたら旦那様の虚言である可能性も否定できないにもかかわらず、どんな物かも分からない(だからこそ夢が広がるのかもしれないが)財宝のために何人も殺したり襲撃していく姿はもう『人生を財宝につぎ込んだ』としか言いようがなく、そのイカレっぷりが徐々に謎がとき明かされていくと同時に明らかになっていくので、西川睦美という犯人は単純な怖さ・何をしでかすか分からない不安要素・優しそうな老婆がイカれた殺人鬼に変貌していく姿等様々な要素で読者、視聴者の記憶に深く残る『悪役』ではないかと私は思うのだ。 さて、名探偵コナンという作品である以上、基本的には犯人は暴かれて逮捕されなくてはならない。もちろん、西川睦美も最終的には逮捕される事になる。 しかし、最後までそのイカレっぷりを見せつけていた西川が逮捕される時にはもはや抜け殻のような状態になってしまった事に私はなんだか虚しさを感じてしまった。 光彦がコナンが落とした犯人追跡メガネを発見し、コナン達をうまく救出するというファインプレーにて西川は逆転されてしまうわけだが、旦那様の財宝の謎を解いていたコナンは西川に財宝の在処を教える。 あのコナンがわざわざ犯人に財宝の在処を教えた事から私も何となくオチが読めてしまったのだが、西川がここまでやらかしながらも求めた財宝の正体は旦那様が残した隠し部屋から見える見事な風景と西川が20年間過ごしてきた城をあげる!というものだったのだ。当然西川は崩れ落ち、もっと凶暴な犯人のように暴れたりする事もなく本当の老婆のように燃え尽きてしまうのだ。 勿論、完全な私利私欲で多人数の命を奪っている以上、同情の余地はない。しかし長年他人を殺害したりわざわざ老婆になりすまして生活してきたりした結果が、城から見える美しい風景が宝でしたー!という非常に下らない(本人にとっては)結果だったショックは計り知れないものではないかと思う。 同情の余地がないのは分かるのだが、どちらかというと私もあまり後先考えずにその場のテンションとかで盛り上がってしまう方で、気づけば後の祭りだったという事もよくあるため、規模は違えどちょっと西川のショックがわかるというか、そういう部分で不本意ではあるが同情してしまったのだ。こういうやらかした事の壮大さが凄まじいにもかかわらず、報われないラストに同情してしまったというケースはコナンの犯人には(個人的には)珍しいため、コイツはやたらと記憶に残ってしまった犯人なのである。 そんなわけで私は名探偵コナンの一番怖かった犯人、一番イカレていた犯人、オチが哀れだった犯人の三部門にはこの西川睦美を挙げたい。 余談だが、西川の奮闘のおかげなのかコイツが登場するアニメ版『青の古城探索事件』は後編で視聴率23.4%(おそらく最高記録では?)を記録している。なんだかんだでみんな結構印象に残る事件なんじゃないかと思う。 dc866104-b34e-4b52-b1bb-7451765e4e88
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