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人工知能の発達はここまで優れたというのに、人は渇ききっている。これは退化だ。
死刑囚と言えど、こんな見せしめのように処刑場代わりに行われるショーがあるなんて。
お陰で、死体や血の処理はこちらに押し付けられる。嫌な仕事は人形がやればいいようだ。
いつだって僕の手のひらは血と泥で薄汚れていて、サーカスの団員でさえ、僕に近付くのを気持ち悪がるようになった。
「おい、このガラクタ、裏のゴミ置き場に置いとけよ。収集の日だけ中に入れとけば大丈夫だろ」
団員の一人がそう言い出した。
僕をこんな風にしたのは、あんたたちなのに。
僕はいつだって道化師としてだけ動くように設定されている。
団員たちがニヤニヤする中、そこでも僕はおどけて回ってゴミ置き場に自ら向かう。団員たちの笑い声だけが、僕の背中を見送った。
雨風をしのげる場所ではなく、僕は直にそれを体で受け止める。主人たちの言葉に従うようにできている。僕は作りもの。ピエロのまがい物。
一晩過ごした朝、目から緑色のオイルが垂れていた。その痕は頬に染み付いて、歪(いびつ)な模様を残した。赤いまん丸の鼻に、緑のしずく模様はよく映えた。
なぜかは分からないけれど、人間はごちゃごちゃ色を付けたものが好きなようだ。
まるで色を失った人間たちの目は、だから、この地下サーカスに来ると途端に瞳をぎらつかせて食い入るように見るのだろう。
そのコントラストもまた、この異様な場所を引き立てていた。
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