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そうして、僕がこき使われたのはどれほどの年月だったか。 僕には月日を計算する機能は付いていない。 1日24時間を、滞りなく営業するためにだけしか機能しないタイマーのようなものが付いているだけ。だから、1日ごとにそのタイマーはリセットされる。 毎日毎日、スリルと鮮血。 スリルというものも僕には分からない。 頬の緑が付いた日。あの日以外で、オイル漏れはなかった。そんなただの不具合もこの長い月日の中のたったの一度。 高値で買われたが、その費用対効果は絶大だったようで、いつしかピエロのこの僕まで剣を持たされるようになった。 狂ったからくり人形のごとくいびつな動きで、断末魔の叫びを真正面から浴びながら死刑囚を拷問ののちに殺していく。 毎度、同じ動きをしていたら客は途端に飽きてしまうものだから、動きを変えて、道具を替えて。 “鮮血のピエロ”。 そう呼ばれるようになったのはそれからだった。 そうすると、もう血と泥で薄汚れた手も、もう気にならなくなった。 だって、これはショーだから。 薄暗いゴミ置き場で夜を明かすのは、なぜだかひどく心地良かった。静かで、安らげる場所。 声援や怒号、狂気の叫びに断末魔。そこが僕の日常の大半で、こちらの方が異空間だ。 ネズミにかじられることにだけは気を払いながら、朝日が来るまでの時間はほとんどの機能を停止させておく。低燃費も、僕のウリだったはずだ。
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