不機嫌な太陽

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「うわッ!!」 「おっと!」  出たところで立っていた人物に衝突して、おもわず小さく呻いた。  顔を上げると、見慣れた顔が驚いたように首を傾げた。 「しょ、昌兄!」 「危ないなあ、どうしたんだ?」 「えっと・・・・」  しどろもどろになりながら、目線が泳ぐ。 「ちょっと、でかけようとー・・・・」 「どこに?」 「えっと・・・・」  首を傾げながら、昌市が顔を覗き込んでくる。  もごもごと口を動かしながら、ちらりと、横に停まっている車に眼をやった。  それに気づいた昌市も、同じように車に視線を向ける。 「あそこ?」  車を指差して、昌市が訊いてくる。  俯いたまま頷くと、昌市は小さく笑みを零した。 「でもなあ、真人に悟のこと見張ってろっていう指令がだされてるからなあ」 「昌兄ぃ・・・・おねがいだから、見逃して・・・・」 「真人にもいえないような相手なの?」 「う・・・・」  おもわず言葉に詰まった自分に、昌市はどうしようもないなとばかりに苦笑を洩らした。 「しょうがないね。真人には内緒にしといてあげる」 「昌兄!」  ぱあっと勢いよく顔を上げた悟に、昌市は笑いながら、その頭を軽くぽんぽんと叩いた。 「そのかわり、夕飯までには帰ってくるんだよ?」 「うん!」  満面の笑みで何度も頷く自分に、昌市は自分の着ていたカーディガンを脱いで、 Tシャツ姿の悟の肩にかけてくれる。 「はい、いっておいで」 「ありがと!昌兄!」  うれしそうに笑いながら、悟は勢いよく地面を蹴った。  その後姿を見ながら、昌市は笑いながら小さく手を振った。
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