不機嫌な太陽

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「さっさと吐いちまえよ。どうせくだらねえことだろ」 「・・・・なんだよ、ソレ」 「くだらなすぎて口にもできねえようなことなんじゃねえのか? いえねえっていうのはそーゆーことだろ」 「違うッ!」 「だったらなんだよ」 「・・・・真人には関係ないだろッ!」 「ああ?」 「ちょっとちょっと・・・・」  険悪になりかけた雰囲気に、いままで黙っていた智紘が堪らずといった感じで口を挟んだ。 「なんでいちいち喧嘩になるんだよ・・・・」  呆れたように息を吐き出す智紘を見て、さすがの自分も口を噤んだ。  真人も同じように、おもしろくなさそうに舌打ちをしながら、黙り込む。  困ったような表情を浮かべて、智紘が真人を見て、そして、すぐに自分に視線を向けた。 「悟、真人が心配してるのわかってるんだろ?」 「・・・・」  ちらりと視線を上げると、テレビを観ている真人の姿が映る。  小さく頷くと、智紘はさらに言葉を繋げた。 「だったら、ちゃんと言葉を返さないとダメだ。 いいたくないことなら、なぜいいたくないのか、きちんと説明しなきゃダメだ。わかるだろう?」 「・・・・うん」  智紘はいつでも正しい。  もっともな意見。  さっきよりはっきりと頷いた自分に、智紘は安堵したように小さく笑った。 「無理に訊き出そうとは思わないけど、心配なんだよ。真人も俺も。悟の元気がないと、不安になる」 「べつに不安にはならねえ」 「・・・・おまえはいちいちチャチャ入れるなよ・・・・」  智紘の呆れたセリフにも、真人は悠々とお茶を飲んでいる。 「でも、まあ、心配にはなるわな」  湯呑を置きながら真人がにやりと笑う。 「帰ってくるなり、いきなり智紘に抱きついて泣かれたんじゃあ、そりゃあ、心配もするぜ?いろんな意味で」  意味がわからず首を傾げた自分の横で、意味深な笑みを浮かべた真人に智紘が咎めるような視線を送るのが見えた。 「なんのこと?」  訊き返すと、智紘は「なんでもないよ」と首を振り、呆れたようにため息を吐いた。  クツクツと肩を震わせて笑う真人の姿が気にならなくもないけれど・・・・。  それでも、まあ、心配をかけてしまったことには変わりはない。
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