不機嫌な太陽

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「あった、あった」  広い本屋をくまなく歩き回って見つけたのは、本日発売のマンガ本。  毎週欠かさずに買っているソレを手にして、おもわず顔が綻んだ。  気分が悪いときほど、よく笑え。  小学校のときの先生がいっていた。  嫌なことがあっても、常に笑顔を絶やさなければ、つらいできごとも笑い話になる。  だから、多少苦しくても、笑っておけ。  笑顔は自分を元気づける力にもなる。  そういっていた先生は、常に笑顔が絶えない人だった。  同じく話を訊いていた真人は、「あほらしい」と、欠伸を噛み締めていたけれど、 自分はその話を真剣に訊いていた。  その先生は、おおらかで、自分のくだらない話でも真剣に訊いてくれる大好きな先生だったから、 こんな大人になりたいって、ずっと憧れていた。  笑っていれば先生みたいになれるって、そのときの自分は眼を輝かせた。  我ながら単純だとは思うけど、それでも、その教えは破られることなく、自分の中で生き続けている。  笑っていれば、みんな笑ってくれるから。  自分のせいで、みんなが悲しい顔をするのはとってもつらい。  夕べのことがあって、今日一日、智紘が自分のことを気にしているのがわかった。  いつも以上に側にいて、ずっと自分の話に耳を傾けている。  智紘が横にいてくれることは純粋にうれしいけど、それでも、気を遣わせていることがわかるから、 申し訳なくも思った。  ときより、心配そうな表情で自分を見る眼が、ちょっとつらかった。  だから、おもいっきり笑おう。  心からの笑顔で応えれば、智紘だって、安心してくれるはずだ。  それをマンガでどうにかしようなんて、我ながら発想が幼稚だけど、 これ以外に思いつかなかったんだからしょうがない。  ニタリと、垂れ下がった頬を引き締め、レジへと向かった。  しかし、振り向いた瞬間、眼の前が真っ黒のものに覆われ、額が鈍い音をたてた。 「いてッ!」 「あ・・・・悪い」  ぶつかったのはどうやら誰かの肩だったらしく、おもわず額を押さえ込む。  そんな自分を見て、ぶつかった相手は、「大丈夫か?」と小さく声をかけてきた。
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