52人が本棚に入れています
本棚に追加
黒沢が考えるように、微かに眼を伏せた。
はあはあ、と息を切らした悟は、そのまま黒沢の眼を見つめる。
切れ長の眼は、やっぱり冷たい。
「・・・・アンタは、なんでそんなに智紘のこと気にするんだよ?」
智紘に執着してる?
いや、違う。
黒沢は智紘のことを知っていて、それでいて、なにかを探っている。
それがなにかはわからないけど・・・・。
わからないけど、そんな感じがする。
伺うように顔を覗き込むと、黒沢は、自嘲気味に小さく笑った。
そして、悟の眼をじっと見つめて、にやりと笑った。
「アイツは俺に似てる」
「え?」
首を傾げて眉を寄せると、それを見た黒沢は、ゆっくりと顔を近づけてきた。
おもわず身を引くが、所詮は押さえつけられている状態。
逃げ場なんてあるはずもなくて、顔を背けたすぐ耳元で、黒沢の息を感じた。
「アイツと俺は似てるから、なんでおまえみたいなガキにアイツが興味を持ったのか、知りたくなった」
「ッ!アンタと智紘は似てない!智紘はアンタみたいなヤツじゃないぞ!!」
堪らず顔を向けると、すぐ眼の前に黒沢の顔があった。
黒沢の冷たい瞳が、眼に、突き刺さる。
それでも、不思議と、その眼は透きとおっていた。
しばしの沈黙のあと、黒沢の口元が、ゆっくりと吊り上った。
「それは、おまえがアイツのことをなにも知らないからだ」
つぎの瞬間、薄く笑った黒沢の唇が、自分のそれに噛みついてきた。
文字通り、噛みつくようなキス。
「ん――・・・・ッ!」
シャツの下から滑り込んできた手が、乱暴に素肌を撫でた。
冷たい指の感触に、背筋が震えた。
「な・・・ッ!やだッ!!ヤメロよ・・・・ッ!!!」
いくらもがいても、もがいても、ちっともビクともしない身体。
激しく首を振って喚いても、黒沢はそれらをすぐに封じ込めてしまう。
飛び散った涙が、顔全体を濡らした。
悔しい・・・・。
悔しい悔しい悔しい・・・・ッ!
適わない。
ちっとも、適わない。
最初のコメントを投稿しよう!