52人が本棚に入れています
本棚に追加
「やだよ・・・・たのむからぁ・・・・やめて・・・・ッ・・・・」
消え入りそうな声に、黒沢は微かに顔を上げた。
それでも、手は動かしたままで、はじめて感じる直接的な刺激に、悟はギュッと眼を瞑った。
噛み締めた唇からは、血の味が滲む。
「ん・・・・ッ・・・・や、ぁッ・・・・!!」
逃げ出したいのにそれとは反対に熱を持つ身体と。
氷のように冷たい黒沢の手と。
悔しさと情けなさと、いろんな感情が溢れて、悟はさらにきつく唇を噛んだ。
しかし、すぐに黒沢の唇が覆いかぶさってくる。
血の味が広がる口中と、滑り込んでくる黒沢の舌。
『噛め』
そういわれているような気がした。
錯覚かもしれない。
それでも、ぼんやりとした意識の中で、自分の唇を噛むのと同じくらい、 きつく、黒沢の舌に噛みついた。
小さく呻いた黒沢は、それでも、逃げなかった。
泣きながら、黒沢の舌に噛みついた。
さらに鉄臭い血の味が、広がった。
悔しさと、悲しさと、つらさ。
意識を失う瞬間、黒沢の黒い瞳が、微かに揺れたのが、見えた。
最初のコメントを投稿しよう!