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ヤバイと思った。
逃げなきゃ、とも。
けど、普段呆れられるほど、すばしっこい足も。
機敏さも。
唯一の取り得の明るさも。
こんなときは、ちっとも役にたたない。
どうしよう。
このままじゃ、きっとヤバイことになる。
わかっていても、こういう状況には慣れていない。
不慣れなだけに、竦んだ足は一向に動く気配を見せない。
あ。
眼が、あった。
立ち竦む自分にゆっくりと近づいてくる人影。
顔もまともに見ることができない。
微かに眼に映った金色の髪が、徐々に距離を縮めてくる。
本当に、ヤバイ。
逃げなきゃ。
早く。
「なにしてるんだ!こんなところにいたら、巻き込まれるぞ!」
突然響いた怒鳴り声と共に、力強く腕を引っ張られた。
未体験の恐怖で縮こまっていた自分の身体が、そのまま逆方向へ勢いよく駆け出した。
後ろからは大きな罵声。
鮮やかなまでの金髪が、自分たちのあとを追ってくるのが見えた。
自分の腕を掴み走る男のスピードが、増した。
いまはただ、ここから逃げなければいけない。
男のスピードに合わせるように、勢いよく地面を蹴った。
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