不機嫌な太陽

26/44
前へ
/44ページ
次へ
「じゃあ、単刀直入に訊くよ」  そう呟いて、智紘が一瞬眼を伏せ、すぐに顔を上げた。 「誰にヤラれた?」 「!」  おもわず腕を振り解いた。  それには気にかけた様子もなく、智紘は僅かに顔を歪めた。  気づかれている。  知られてしまっている。  自然と、眼に涙が溢れた。 「悟・・・・」 「・・・・なんで・・・・」  やっとの思いで吐き出した声は、自分の声とは思えないほど、か細い声。 「・・・・ごめん。もしかしたら、って思って・・・・だから気になった」 「・・・・」  俯いた自分の頭を、智紘がやさしく撫でる。  あたたかい手だ。 「悟が泣いていると思ったら、いてもたってもいられなかった。 だから、真人に頼んで、ここにきたんだ。俺、悟には泣いてほしくない。 笑っていてほしい。悟の悲しい顔は、見たくないから・・・・だから・・・・」  そういって、智紘は、悲しそうに眼を伏せた。  笑っていてほしい。  そう思ってくれるから。  だから、笑いたい。  自分が笑えば、智紘も綺麗な顔で笑ってくれる。  俯いてなんて、ほしくない。  震える手を伸ばすと、智紘はその手を握った。  真人と同じくらい、あたたかい手。 「・・・・真人もつらそうだった」 「え?」 「悟もわかっていると思うけど、真人は気づいてるよ。だけど、自分にはいい難いだろうから訊けないって・・・・」 「・・・・」 「だけど、このまま黙ってみているわけにはいかないんだ。真人も、俺も」 「え・・・・」 「悟の痛み、俺らにも分けて」 「・・・・」 「全部、知りたい」  智紘の指先が、目尻に触れた。  溢れる涙を拭うあたたかい指に、そっと眼を伏せた。 「本当に許せないんだ・・・・」 「え・・・・?」 「悟を傷つけた相手を」 「智紘・・・・」 「俺も真人も、許せない」 「・・・・」  そういって、智紘は視線を上げた。  絡まる綺麗な瞳は、確実に自分を射抜いた。 「誰か教えて」  強く手を握って、智紘が自分を真っ直ぐに見据えた。  すぐに、勢いよく首を振る。  それを見て、智紘が眉を寄せた。
/44ページ

最初のコメントを投稿しよう!

52人が本棚に入れています
本棚に追加