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「いえない相手なの?」
「そうじゃなくて・・・・ッ!だって、智紘が・・・・!」
「え?」
しまった。
咄嗟に口を塞いでも、あとの祭り。
智紘の顔色がみるみる変わる。
なんで、自分はこうもバカ正直なんだろう・・・・。
自分の口の軽さを恨みながらも、パニックになった頭では、弁解の言葉すら思い浮かばない。
「・・・・俺の、知っているヤツ?」
「そうじゃないッ!」
「嘘つくなよ」
「違う!違うって・・・・ッ!」
「悟!」
がっしりと肩を掴まれて、さらに視線が絡まった。
いままで見たことがないくらい真剣な智紘の表情。
眼を固く瞑って、小さく首を振った自分に、智紘は肩を掴む手に力を込めた。
だって、だって・・・・。
智紘と黒沢が友だちだったら、こんな事実、智紘にとってつらいだけだ。
悲しませるだけだ。
智紘のつらい顔なんて見たくないから・・・・。
「悟・・・・」
「・・・・」
「俺、悟の悲しい顔なんて、見たくないんだよ」
「・・・・ッ」
閉じた眼から涙が零れた。
あやすように頭を撫でられる。
あったかい、あったかい手。
つらそうに自分の顔を覗き込む智紘の表情を見て、とてつもなく悲しくなった。
いまの自分が、智紘にこんな顔をさせているんだと・・・・。
そう思ったら、さらに涙が溢れた。
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