不機嫌な太陽

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「前に一度会ったんだよね?えーと、名前は・・・・」 「悟です!西原悟!」  おもわず力いっぱい答えた自分に、康平は「悟クンねー」と、笑いながら悟の頭をふんわりと撫でた。  他の人にやられたら間違いなく文句のひとつでもいってやる行為だけど、康平だとちょっと違う。  一度しか会ったことはないが、自分の中で康平の存在は「理想のオトナの男」ってくらい憧れの的になっている。  だって、それくらいカッコいい。  照れくさくてへらりと笑った自分の傍らで、一瞬存在を忘れかけていた男が静かに口を開いた。 「智紘ねぇ・・・・アイツ、友だちなんていたんだな」  感心したように呟かれたセリフに、おもわず顔を上げた。  その横で、康平が困ったように笑う。 「高校生活、結構たのしんでるみたいよ?友だちも多い」 「・・・・随分と毛色の違うガキとつるんでるみたいだな」  向けられた視線が悟の眼に冷たく突き刺さる。  あきらかに好意ではない視線。  薄い唇から吐き出された煙が、ゆっくりと円を描いた。  黒沢の言動に、文句をいいそうになった口を、寸前で噤んだ。  それでも、自分を品定めしているかのような黒沢の眼の動きに、おもわずムッと眉を寄せる。  そんな自分たちの様子に、康平はやっぱり困ったように苦笑を洩らした。 「まあ、そういうなよ。アイツもいろいろ頑張ってるんだ」  アイツ、とは、智紘のことだろう。  康平の言葉の意味がいまいちわからなくて小首を傾げた自分の横で、 黒沢が呆れたようにため息をついて、短くなった煙草を地面に落とした。 「・・・・アイツに友だちごっこは似合わないな」 「なんなんだよ!アンタ!!」  黒沢の言葉に、一瞬で頭に血が上った。 「さっきから訊いてりゃ、失礼なことばっかりいいやがって!!アンタに智紘のなにがわかるってんだよ!!」  突然、大声を張り上げた自分に、黒沢と康平は驚いたように眼を見開いた。  それでも、そんなことを気にする余裕なんて、ない。  歯を食いしばって、眼の前の、嫌味な男の顔を、思い切り睨み上げた。
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