不機嫌な太陽

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「智紘はやさしいし、頭もいいし、すっごくいいヤツなんだぞ! オマエみたいなヤツに、智紘をバカにしていい権利なんてない!!」  智紘は自分の大切な、大切な友だちで。  自分のくだらない話にも真剣に耳を傾けてくれる数少ない、自分の理解者で。  これからもずっと。  できれば、ずっと、ずっと、一緒にいたいと思うような貴重な存在で。  そんな大切な存在をバカにされて、自分が黙っていられるはずがない。  自分のこと以上に腹が立って、とてつもなく、悔しい。  ギュッと唇を噛んだ。  悔しい。  本当に悔しい。  肩にかけたカバンを、力強く握り締める。  呆然としている黒沢の顔をもう一度睨みつけて、勢いよく踵を返した。  後ろから康平の声が聞こえたような気がしたけれど、足を止める気にはならなかった。  ただただ、腹が立って、悔しくて。  走りながら、千切れそうなくらい唇を噛み締めた。
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