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暗くなりかけた空を見上げながら、見慣れた住宅街に足を踏み入れた。
ほのかに輝く星空をぼんやりと眺めていると、幾分、気持ちも落ち着いた気がする。
冷静になりかけた頭で考えて、ちょっと頭を捻った。
「もしかして、やばかったかなー・・・・」
気の強いことが自分の取り柄。
まあ、そんなこと取り柄といっていいのかどうか微妙だけど。
よくいえば、正義感が強い、というかもしれない。
けど、悪くいえば、ただの短気。
いつも真人には後者のことしかいわれない。
短気。単細胞。バカ。
そういわれるたびに、カッとなって向かっていくから、真人にはやっぱり「ガキ」といわれる。
自分が相当短気なのは、自覚しているし、それは変えようもない事実。
けど、今回はちょっと勝手が違うかもしれない。
相手は智紘と康平の知り合い。
そんな相手に牙を向けてしまったということは、やっぱり、ちょっとマズイかもしれない。
「でも、アイツが悪いんだ!」
そう、あの黒沢という男。
俗にいう色男のくせに、その口からは嫌味ばかり。
腹が立つことこの上ない。
智紘の知り合いだろうとなんだろうと、腹が立つものは腹が立つ。
自分の大好きな智紘を、自分の眼の前で、バカにした。
それだけは誰が相手でも許せない。
嫌味ったらしい言葉を吐き出すポーカーフェイスを思い出しながら、 道端に転がっていた石ころを思いっきり蹴飛ばした。
「あ~!ムカツク!!」
その途端、キュウと、小さな音をたてるお腹。
変なところで力を使うとお腹がすくものなんだよな、人間って。
鳴り出したお腹を擦りながら、我が家の前で立ち止まる。
見上げた家はいつものことながら、真っ暗。
父は五年前に他界していて、バリバリのキャリアウーマンの母は、ほとんど家にいることがない。
いつも日本中やら世界中やらを飛び回ったりと、大忙しだ。
一緒にいる時間は少ないけれど、それでも、いつも笑顔を絶やさず一生懸命に働く母を、自分はかなり尊敬している。
あんなパワフルな女性は、なかなかいないと思う。
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