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いいなぁ、いいなぁ、あの色気。
ゆう子さんの和製峰不二子みたいな容姿を思い出してそんなことを思う。
そろそろ身体が冷えてきたから、部屋着用のTシャツと綿のパンツを汗が引いた素肌の上に着る。
川原くんのことを思い出した。
帝都市立大学。帝都大学とは駅一個分しか離れてない。
こんな偶然ある?
きっと住んでいることろもそんなに遠くはないはずだ。今までどこかですれ違ったりしなかったのだろうか。地元から新幹線や電車で3時間から4時間はかかる距離。
昔のことを言われたり、いじめられていたことをネタにされたりしたらどうしよう。もしくは中学のときみたいにひどいことを言われたらどう反応していいかわからない。
仲良くなれそうな人たちもいるバイト先。
逃げ出したい気持ちは少しの希望によって妨げられる。
今日は、彼氏である祥吾が来る予定になっている。
さっきから、祥吾の好物であるカレーを煮込んでいる。料理があまり得意でない私にも失敗なく作れるから、祥吾と付き合いだして、何度か振る舞ったことがある。
通話アプリは既にメッセージを読みましたという通知を出しているのに、連絡がない。
もしかして、今日も?
祥吾は、サークルや飲み会を理由にたまにだけど私との約束をすっぽかすことがある。
バイトを始めようと思ったのは、祥吾へのささやかな反抗心。
自分は好き勝手にするくせに、私にはほかの男性と話すと怒ったり、サークルの飲み会へ出ることに難色を示したり、少し束縛をする。
私を好きなことはわかる。だけど、少しだけ負担に感じている自分がいることも薄々気づいていた。
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