prologue

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あの名前を呼ぶ資格など俺にはないと思っていた。 心の弱さが招いた出来事は、後悔なんて甘っちょろい言葉では片づけられず、心の奥底に沈めてしまう他なかった。 涙をこらえたあの子の顔を忘れることが出来ない。 確かにあの子のことを好きだったのに、守るどころか傷つけてしまった。 ふとしたときに思いだす。 一人部屋で過ごしている時や、彼女の髪の色に似た人を見つけた時に。 夢の中に出てきたときは、全力で彼女を追いかける。 彼女は夢の中だと笑いかけてくれる。 その時の俺は、中学二年生の学ラン姿に戻っていて、彼女も制服姿だ。 もう二度と、悲しませない。 絶対に彼女を幸せにする。 夢の中で固く決意する。 だけど、現実は一つも変わっていなく、彼女は俺の前にはいない。 夢と現実のあまりの違いに絶望感を抱きそうになる。 目の前が真っ暗になる感覚を押しのけるのはずいぶんうまくなってしまった。 気持ちが沈む前に、他のことを考えればいい。 すぐに切り替えて、現実に向き合う。 少しでも油断すると揺さぶられる。 懺悔と自責と恋心を持て余してしまう。 忘れてしまえ。 もう、どうすることもできないのだから。
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