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シャワーを終えてバスローブ姿で窓際の椅子に座った。やっと日が落ちて、夕焼けと暗闇が同居したような空が目の前に広がっている。
雄聖に会えた興奮で、目が冴えていた。
「帰ってきたんだな~」
独り言をつぶやいて、イギリスでの怒涛の日々を思い返す。
日本のビル街を眺めていると、海の向こうに置いてきた忙しい日々が幻だったんじゃないかと錯覚を起こす。
慣れ親しんだ二人部屋の寮。一緒に卒業したイギリス人の友人。また必ず会おうと約束した。
学校が終わって気分転換によく散歩していた公園。
カップルが多くて、ちょっとだけ寂しくなったっけ。そんな時は空いてるベンチに座って手帳に挟んだ雄聖とのツーショット写真を眺める。
会いたくてたまらなくて目が潤んでしまうこともあった。
同じ科の男の子から告白されたこともあった。
ストレートな英語での愛の言葉。金髪で青い目をしたきれいな男の子だった。
女の子から振られたことなんか一度もなかったようで、わかりやすくショックを受けていた。
諦めきれないと何度か言い寄られたから、雄聖との写真を見せた。
バイト先で店長が撮ってくれた写真は、ゆう子さんや池崎さんが、もっとくっつけとはやし立てたから、腕を組んで撮ったのもあった。
雄聖は照れたような顔で笑っていて、私は自分でもわかるくらい満面の笑みでカメラを見ていた。
私の幸せはこの人の腕の中にあるとたどたどしい英語で伝えた。
日本語では絶対に言えないけど。この写真の中の君を見たら諦めがついたとその彼は言って、その後はいい友達として付き合った。
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