#1 美羽

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家庭教師… 居酒屋… コンビニ… キャバクラ!?… 学生とは言え、レポートや実習があるので、そのあたりも考慮してくれるバイト先がいい。 学生歓迎の文字を探す。 コンビニの募集が多いな。学生が多い街だから、学生歓迎のところはチラホラ目につく。 出来れば家や学校から通いやすいところがいい。 一つだけ、目を引いた求人があった。 オープニングスタッフ。 学生歓迎。 テスト期間、就職活動、シフトの融通きかせます。 一人暮らしのアパートからも自転車で行けそうな距離。 新規オープンのレストランのようだ。 ここにしよう。私にしては即決だ。いつもはあれこれ悩んでしまうのに。 今日に限ってピンと来てしまったのだ。 前期試験も終わり、残すはレポートのみとなった7月中旬、漠然とした期待と少しの不安を混じらせてスマホの通話ボタンを押した。 電話で話した黒木と名乗る男性は、物腰柔らかく、丁寧に対応してくれた。 なんとなく大丈夫そう… 根拠のない自信が湧いてくる。 バイト雑誌を眺めて、電話して…結構な時間が経ってしまったらしい。 気づいた時には外は真っ赤な夕焼けに夜の気配が漂っていた。 「ふぅっ。お腹すいた!!」 大きな独り言を言って、冷蔵庫の中を確認する。 貧相な冷蔵庫の中身は家庭的に見られる外見に似合わず、ずぼらな性格を表している。 「買い物して帰ってくればよかった…」 肩を落とし、ため息をつく。
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