#2 美羽

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無事にアルバイト先が決まり、今日は顔合わせと研修のため、自転車で向かう。 この前面接してくださった黒木店長は私のような学生にも丁寧に接してくれて、優しそうな人だった。まだ若そうなのに落ち着いていて、年齢不詳に見えた。 首都圏やこの街の近郊にいくつか支店があるらしい。白を基調とした店内は広々としていて、新築の、正確に言うとリノベーションだが、新しい建物の匂いがした。 ここでなら、私、頑張れそうな気がする。 友達ができるといいな。 私がアルバイトすることになったのは、カジュアルレストランのホールスタッフ。 制服はないが、黒いカフェエプロンが支給された。全身黒なら、何を着ても良いらしい。 着てきたカットソーを脱いで黒いTシャツに着替えてホールに集まる。 同じ大学の子と更衣室で一緒になり、安心した。相手の子もどこかホッとした表情をしていたから、きっとみんな少し不安なんだろう。 店長のあいさつが済み、まずは自己紹介とのことで、池崎という背が高くがっしりした男性から始まった。 私も大学や学部、出身地などを、緊張しながらも自己紹介した。 初めてのバイトだから、そわそわと落ち着かない。ゆっくり息を吐きながら、周りを見回した。 学生っぽい人が多い。主婦っぽい人は昼間のスタッフかな? 自己紹介も最後の方となった。 「川原雄聖といいます。帝都市立大学2年です。よろしくお願いします。」 背が高く細身の男の子が発したその名前――― 声を発した男の子を見た。 まさか・・・ 心臓が嫌な音を立てる。背中に冷たいものが走る。 人違いであってほしい。同姓同名であってほしい。 ずいぶんと外見が変わっていたが、成長した中学の同級生がそこにいた。
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