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「葛西君、今日もお疲れさま」
「はいっ! お疲れ様です!」
勤務が終わり、僕、葛西秀一と可憐さんは笑顔であいさつを交わす。
今日の勤務場所はホームセンター。無事に捕捉も挙げることができた。
僕達は、万引きGメンとして日々仕事をしている。
本当は一人でのびのびと仕事をするはずだったのだけど、最初にインターンについて貰ったのがきっかけで、ずっと可憐さんとコンビを組んで仕事をしているのだ。
可憐さんは少女のように小柄で可愛らしい人なんだけど、大柄な男を取り押さえるくらいに強くて、仕事に対しても厳しくて、僕は毎日みっちりしごかれてます。とほほ。
「しごかれてるのは、葛西君がヘマをやらかすからでしょ? 本当にクソ虫なんだから」
……あと、なぜか僕の心を読めます。
「まあ、今日は葛西君も頑張ってたし、成長は認めてあげるわ。さ、下番報告して帰りましょ」
「はいっ!」
まあ本心では優しいし、見た目も可愛いし、なんだかんだ言って今の状況は僕にとって楽しいんだけどね。でへへ。
「もしもし。本条可憐です。ただいま勤務が終わりました。……え? 明日の勤務先が変更……? え、ええええーーーーーーーーーっ!?」
不意に、可憐さんが電話口に向かって大きな声をあげる。
その理由は、僕にとっても驚くべき物だった。
「……葛西君。明日、制服勤務だって」
「へっ?」
私服で万引きを捕まえる僕らが、制服の警備員?
意図の不明なこの指示が、新たな波乱の幕開けになることを、僕はまだ知らなかった。
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