第1章

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それからは、引き継ぎやらなにやらで多忙に多忙を重ね、悲しんでいる暇などなかったのはありがたかった。 砕けた心は感情をコントロール出来ないから、ただただ無心に仕事に取り組む。 そんな私に、彼は 「俺の部下は本当に頼りになるなぁ。こちらの仕事は何も心配がない。お前が頑張ってくれたからだな。ありがとう」 そう言って、頭を優しくポンポンとしてくれた。 頭をポンポンって・・・。 こんなの、マンガやドラマでしか見たことがない。本当にやる人なんているんだ。 彼がいない会社で働くのは辛すぎるから、転職しようかとも考えた。 けれども、それだとまるで無縁になってしまう。せめて同じ会社という細い細い繋がりだけでも残していたい。 彼との思い出が溢れる場所で、彼の残像を感じながら仕事が出来るのか不安しかないけれど。
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