プロローグ

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 燃え盛る、炎の轟音で視界が開けた。  灼熱の赤い波が、目の前まで迫っていた。  チリチリとタンパク質が焦げる、独特の臭いで、意識が覚醒する。  目も耳も肌も。  全ての感覚が蘇る。  ジリジリと肌を焦がす、赤い飛沫。  思わず、「ヒィッ」と声を上げ、後ずさりする。  それと同時に、地獄の底から這い上がってくるような、薄気味悪くも大きな呻き声と、耳を裂くような、甲高く、喉が張り裂けんばかりの絶叫に身体を震わした。  自らも、その場を離れなくては、危険な状態。  しかし、荒々しく波立つ赤い海の中。  真っ黒な塊が二つ、激しく踊り狂っていた。
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