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その瞬間、自分のしでかした事の重大さに気が付き、弾けた様にそこから逃げ出そうと思ったのも、時は既に遅し。
本来ならばファッション性だけでなく、自身の身を守る為の衣服にまで、形のない獰猛な牙が襲い掛かかり、皮膚を焦がし、異臭を放つ。
余りの痛みに、大きく口を開け泣き叫ぶも、辺り一面に広がる炎の熱によって、喉が焼け、掠れた声へと変わっていく。
しかし、どんな時でも、人間とは生きようとする意識が働くのか。
鋭く痛む身体を気遣うよりも、この波に呑まれまいと、必死で足を動かし、出口へと向かう。
煙で前が見えず、そして、息も吸えない状態で、ふらつく体は階段で足を踏み外し、踏ん張る事が出来ずに転がり落ちる。
あぁ……
私は何も、悪くないのに……
何で、私がこんな目に……
どうして……どうし……て――――
そこに残された物は、黒く黒く広がった……『闇』だけであった。
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