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網膜剥離だと言われ、手術でほとんどが治ると聞いた時は安心した。一度は視力は回復し、生活も元に戻った。だが、自分の目は回復を拒んだ。再び剥離を起こし、今度は二度と光を取り戻すことは出来なかった。
就職したばかりの会社を辞め、退院した後は自宅で引き籠った。歩く事が怖く、部屋や廊下を探りながら進む。
医者からは退院後に生活訓練をするための施設を紹介されたが、絶望していた自分は施設へ通うことを拒絶した。
親はこんな自分に失望しつつも、一生面倒を見続けるのだろう。そう思うとやりきれなかった。
食べて寝るだけの生活だ。
仕事だって出来やしない。
連れ合いも出来やしない。
趣味だって出来やしない
生きていても仕方がない。
きっと死んだ方がマシだ。
そんな事ばかりを延々と考えていた。見舞いに来た人達に当たり散らし、親にも酷い言葉を投げつけた。
今考えると、目以上に、心が闇しか見ていなかったのだと思う。
暗く深い水の中。身体中にまとわりつく水は重く、もがいても、思うようには動けない。そうして、自分は、動くことを止め、沈むことに身を任せた。
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