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一息つこうと、伏せ、這いつくばったまま後退したら、脚が誰かにぶつかった。
顔を向けると、〈カネダ〉と〈タミヤ〉が並んで伏せていた。軍服を着たカネダは、恵まれた体格と無精髭があいまって、立派な野戦将校に見えた。華奢なタミヤの方は、サバイバルゲーマーがいいところだったが。
「ごめん」
「ああ、大丈夫だ」
カネダがそう言った、そのときだった。
三人の間に、一体の〈マーズ〉が落下、静止した。
かいくぐってきたのか?
瞬間、ヒトデのような星型に変形したかと思うと、木組み細工のように回転し、水平になった十字型に変形した。長辺の底に移動したポインタが、小さな赤い銃口として、ぼくの額をロックオンしたのがわかった。
「〈ナツメ〉!」
即応したのはカネダだと、声でわかった。ぼくもガンを構えたかったが、左向きに身体をひねっていたので、うまくいかなかった。ぼくは左目で、マーズの十字の足が四方に避け、光線を集中させるのを見た。電撃であれだけ痛いんだ、撃たれたらさぞ痛かろう。その痛みは、情報的存在にすぎないこのぼくにも、何か成長をもたらしてくれるのだろうか_
「このやろう!」
マーズの銃口に集中していた光が、キュッと真一文字の直線をかたどり、その力を押し出そうとする瞬間に、身体ごと撃ちかかるようなカネダとタミヤの砲火によって、マーズは押し倒された。
「きゃっ」
きゃっ?
女の子の声が聞こえたような気がした。
だが、その時すでに、タミヤの銃口が、マーズの正中線を捉えていた。
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