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驚いたことに、タミヤには天賦の才があった。
本人も信じられないようだったが、間違いない。
あの時、誰も気づいていなかったが、ぼくたちの陣は、側面から縦列突貫をうけていた。
タミヤは、陣中に飛び込んできた先の一体を屠ってすぐ、頭を低くして体を振ったかと思うと、フッと消えた。
気づくと、四体のマーズが、大きく膨らませた脚状の結晶体を叩き折られ、横たわっていた。海辺に打ち上げられた透明な海星みたいに。その姿をみて、ぼくは少しだけ同情した。カリキュラムのために現出させられた情報生物<マーズ>。魂も内面もないのだろうが、その運命はぼくと大して変わるわけじゃない。
「よくやった」
先生の声が、頭上からふってきた。
「見事だ、タミヤ」
「僕、僕は・・・一体」
異様だった。
細身でいかにもひ弱そうなタミヤが、古参兵よろしく、ガンを中腰に構えていた。なぜ、自分がにそんなことができたのか、わからないようだった。
ぼくたちもあっけに取られていた。数人が倒れ、身体を薄くしていた。頭上に浮いているネームが、<破>に変わっている。屍者は、色を失い、匿名になるのだ。
クラスメイト三十一名、負傷二、撃破一、生存二十八。
マーズ三十一体、撃破二十四、退却七。
圧勝、いや、虐殺みたいなものだった。
こんなのは、はじめてだ。
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